チュチェ106(2017)年 10月 27日 朝鮮新報

 

無償化制度を即時適用せよ/3000余人で「全国集会」、
子どもの学ぶ権利求める

 

「朝鮮学校の子どもたちに学ぶ権利を! 全国集会」が10月25日、東京・渋谷区の代々木公園イベント広場野外ステージで、フォーラム平和・人権・環境、「朝鮮学園を支援する全国連絡会」、「高校無償化からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」、日本朝鮮学術教育交流協会、全国朝鮮高級学校校長会、全国朝鮮高級学校学生連絡会、朝鮮学校全国オモニ会連絡会、全国朝鮮高級学校卒業生連絡会ら実行委員会の主催で行われた。集会には、総聯中央の許宗萬議長をはじめとする関東地方の活動家と同胞、日本市民など3千余人が参加した。集会後にはデモが行われ、無償化制度の即時適用を強く求めた。

今回の集会は、日本政府が高校無償化制度から朝鮮学校の生徒のみを除外し、その是正を求めた東京朝高卒業生たちの切実な訴えを9月13日に棄却した東京地裁の暴挙に対して抗議し、日本当局の悪辣な策動を糾弾するとともに、民族教育固守の闘いを支持する日本の社会世論をいっそう喚起する目的で催された。

厳しい冷え込みと降りしきる雨、そして一部右翼勢力の妨害にも負けず、千地健太さん(無償化連絡会)と鄭和瑛さん(西東京在住同胞)による司会で始まった。

主催者を代表してフォーラム平和・人権・環境の藤本泰成共同代表、全国朝鮮高級学校校長会の愼吉雄会長があいさつに立った。

藤本共同代表は、日本の伝統文化と社会の中には朝鮮半島で生まれ育った文化に由来するものがあり、日本と朝鮮は不可分につながっているとした上で、現政権は「高校無償化」制度に関して文科省令を改悪して朝鮮学校生徒を対象から外しておきながらその差別性を認めていないと指摘。10月22日に終わった総選挙後も差別主義者が大手を振って政治の舞台に立ち、東京地裁や広島地裁はその政権の姿勢に迎合し、法理に則った冷静な司法の判断を放棄したと述べ、日本社会が今、無法地帯と化していると警鐘を鳴らした。そして日本人の未来、日本人自身のためにも朝鮮学校生徒をはじめすべての子どもたちに無償化制度が適用されるようがんばろうと呼びかけた。

愼会長は、9月13日の東京地裁判決などを振り返り、審査会や文科省から求められたあらゆる問いに詳細な資料をもって誠実に回答し、文科省の役人たちの学校訪問、授業参観、教員、生徒たちへの聞き取り、ビデオ撮影などに誠意をもって協力してきたと述べ、日本当局が言いがかりをつけてきた「支援金の流用」などが保護者たちによる「学校運営理事会」の監査を通るはずもないと指摘。また、裁判で国側が一条校の「高等学校」になれば支援金をもらえると言い放ったのは民族教育をやめれば金をあげるという「民族教育抹殺論」であるとし、許すことはできないと強調した。また、現政権の民族教育弾圧は地方自治体などでの補助金支給停止、日本社会での朝鮮人排斥の雰囲気の高まりにまで及んでいると述べた。そして、歴史的経緯を考えると民族教育への支援は日本政府の当然の責務であり、また、朝鮮学校は日本で朝鮮人を育てることができる唯一の教育機関、学び舎であるとし、朝鮮学校の教職員たちは、保護者、在日同胞はもとより、弁護団、支援してくれている日本や南の友人と共に手を取り、心を一つにし、良心と正義が実現されるその日までたたかいたいと表明した。

つづいて南朝鮮の支援団体「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」のソン・ミヒ共同代表が連帯のあいさつに立ち、日本で多くの良心的な人たちが朝鮮学校を支援していることに謝意を述べ、参加者に向けて勝利する日まで一緒に行動すると力強く述べた。

また、東京無償化裁判弁護団の李春熙弁護士が広島、大阪、東京における無償化裁判判決について言及しながら、大阪での勝訴は正当な民族教育への弾圧を断罪した貴重な1勝、すばらしい1勝だったと指摘。残りの2敗については真実が軽んじられ、やりたいことがまかり通る時代の反映でもあると思うと述べた。そして、裁判所が子どもの笑顔、学ぶ権利を守るよう、一緒にたたかっていこうと訴えた。

リレートークでは、各団体を代表して、全国朝鮮高級学校学生連絡会の安理沙さん、全国朝鮮高級学校卒業生連絡会の梁昌樹さん、朝鮮学校全国オモニ会連絡会の金栄愛さん、「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」の韓哲秀さん、「広島無償化裁判を支援する会」の村上敏さん、朝鮮学校無償化実現・福岡連絡協議会の瑞木実さん、「東京朝鮮高校生の裁判を支援する会」の長谷川和男さんがそれぞれの思いを語り、朝鮮学校、民族教育を守るためのたたかいを今後も展開していく決意を述べた。

最後に、集会決議案(アピール、別掲)が読み上げられ、採択された。

閉会後、集会会場から渋谷駅周辺を経て神宮通公園までの1.8キロ区間でのデモが行われた。朝鮮大学校学生による吹奏楽隊の音楽が鳴り響く中、11の隊列を組んで臨んだ参加者は「朝鮮学校生徒に無償化制度を即時適用せよ!」「朝鮮学校に対する不当な差別を直ちに是正せよ!」などのシュプレヒコールをあげながら繁華街を力強く行進した。

 

集会アピール(全文)

 

朝鮮学校の子どもたちに学ぶ権利を! 全国集会アピール

私たちは朝鮮学校に通う子どもたちの権利を守り、真の多文化共生社会を実現させるために、本日、東京・代々木公園に集まり、「朝鮮学校の子どもたちに学ぶ権利を!全国集会」を開催しました。

7月に広島と大阪で、そして9月に東京で、高校無償化制度からの朝鮮高校排除を巡る訴訟の地裁判決が言い渡されました。広島と東京では国側の主張を書き写したような不当判決が言い渡されました。私たちは、高校無償化法の趣旨に反し、子どもたちの学習権や民族教育の意義を一顧だにしない不当判決に強く抗議します。「人権の砦」であるはずの司法が行政権力を「忖度」し、高校無償化からの排除に不当な「お墨付き」を与えたことを、きわめて深刻な事態として捉えざるを得ません。

一方、本年7月28日の大阪地裁における行政訴訟は、高校無償化法の趣旨に則り、朝鮮学校だけを排除する省令改定は違法無効であると、朝鮮学園の権利を正当に認定しました。西田隆裕裁判長は、文科大臣が行なった朝鮮学校の不指定を取り消し、文科大臣に指定を義務付ける原告完全勝利判決を言い渡しました。国は不当にも控訴しましたが、直ちに控訴を取り下げ、高校無償化を適用するべきです。

愛知・福岡でも裁判闘争が行われています。国家による「朝鮮学校差別」は、各地方自治体の不当な補助金停止をももたらしました。

教育の機会均等や民族教育の保障は、憲法をはじめとする国内法規や国際人権法に定められ、政府・地方自治体として実行しなければならない責務です。2014年9月には、国連の人種差別撤廃委員会が、日本国政府に対して、朝鮮学校への高校無償化制度の適用、そして地方自治体の補助金の再開・維持を要請することを勧告しています。

朝鮮学校支援・無償化適用を求める闘いは、韓国にも広がり、2014年には「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」が結成され、ソウル日本大使館前での金曜行動が続けられ、今日の集会にも参加しています。

この8年間、朝鮮高校生はもちろん、卒業生や家族たちも、文部科学省前の抗議行動、各地での抗議行動等々に多くの時間を割くことを余儀なくされてきました。

私たちは、引き続き、各地の朝鮮高級学校への無償化適用、かつ既に卒業した朝鮮高校生たちに過去の就学支援金相当額の支給をすることを求め、また、国家による「朝鮮学校差別」にならって、不当に補助金を停止した各地方自治体が直ちに補助金を再開・増額することを求める闘いを力強く展開していきます。

 

2017年10月25日

 

朝鮮学校の子どもたちに学ぶ権利を! 
全国集会参加者一同

(朝鮮新報)