チュチェ108(2019)年 6月 12日 ウェブ・ウリトンポ
朝鮮学校無償化裁判を通して考える 「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する
高校無償化制度から朝鮮学校だけが排除されて9年目。この間に多くの子どもたちが自分たちの存在を否定されるような悔しさを感じ、保護者も学校関係者も、日本政府の、日本社会のあまりの人権感覚の低さにどれだけ傷つけられてきたことだろう。日本社会は、安倍政権の長期化によって、救いようがないほど劣化の一途をたどっている。ただひたすら、アメリカのトランプ大統領のご機嫌を伺い、アメリカの戦争に引きずり込まれることを是とするような政策が目に余る。朝鮮学校の生徒に支給されるべき支援金は年間一人当たり、約11万円と言われているが、9年間ですべての子どもたちに支援金が支給されたらいくらになるのだろうか。アメリカから買わされる、事故が多発しているお粗末なオスプレイやF35戦闘機は1機100億円以上すると言うがそれを100機以上購入。そして、2基で5000億円とも言われるイージスアショアなどの買い取り金額を総合したらいくらになるのだろう。また、災害の多いこの国に本当に必要なレッド・サラマンダーという万能救助車は1台1億1千万円と言うが日本には1台しかないと言う。私たちの税金が誰のために、何の目的で使われているのか、あまりにも無関心な人が多いことにいら立ちを感じる。 朝鮮民主主義人民共和国(以下共和国と略称しよう)に関係するものは、すべて憎しみの対象にされてしまうのか。国連では核開発に対して制裁を科すと言っているが、すでに大量の核を持っている国はどうなのか、そして、常にアメリカに攻撃される危険を感じてきた共和国が核開発せざるを得ないように追い込んできた責任は誰にあるのか。アメリカはリビア方式をとりたいと提案しているがとんでもない事だろう。リビアはどうなったのか、考えればわかることだ。そして、安倍政権は森友・加計などの責任を問われるや、批判の矛先を共和国に向けさせるように脅威を煽り、選挙に勝ってきた。今や、中断しているとはいえ、東アジア情勢は劇的に変化して、南北朝鮮の恒久的平和と統一に向けて動いている中で、日本だけが取り残されている。今になって、安倍総理は、直接金正恩委員長と対話する用意があるなどと言っているが、圧力をかけることを優先する姿勢、共和国に繋がるものは全て制裁の対象とし、子どもたちの祖国訪問の土産まで取り上げるようなことをしてきて、今更、無条件に対話といっても、案の定相手にされない現実をどう考えるのか。拉致問題の解決を最優先政治課題と言って総理大臣にまで上り詰めながら今や拉致家族会からやるふり、口先だけが批判されている。小泉訪朝の時に官房副長官として同行し、「こんなちっぽけな国、草1本生えないようにしてやるぜ。」と豪語したことは、文章にもなっている。また、ストックホルム合意を履行し、在北日本人の全調査報告を提出しようとしたのに、その受け取りを拒否したのは誰だったのか。 朝鮮学校は朝鮮総連と密接な関係にあり、生徒たちに支給される支援金が総連にわたる可能性があるなどと、悪意に満ちた想像で裁判は原告敗訴を告げた。唯一司法としての手立てを取り、まともな判決をおこなった大阪地裁判決は、朝鮮学校と朝鮮総連の関係は歴史的に見ても当然のものであると断言している。4・24朝鮮学校閉鎖令時に当時の朝連が解散させられたが、現在の総連は共和国との国交がない中で、大使館的役割を果たすところであり、平壌宣言の履行に伴って、国交正常化がすすめられなければならないことは自明である。しかし、朝鮮総連への銃撃テロが起きても、国会議員の誰一人としてその異常さを追求しなかったことはこの国の人権感覚の劣化の象徴でもある。 私は朝鮮学校差別は、この国の人権問題、歴史認識問題として考えているが、国内の状況の劣化に対して、海外の力を借りなければならないとも考えている。韓国で設立された「ウリハッキョと子どもたちを守る韓国市民の会」は結成以来、目覚ましい活動を続けている。先日も第12次の訪日団37人が東京の朝鮮学校を訪問し、感動的な出会いを経験してくれた。今回は教員組合の方々が多く訪日されて、韓国の学校にも日本の学校にもない朝鮮学校のすばらしさを語ってくれた。「子どもたちの表情がすばらしい。自分の事だけでなく友だちとともに成長しようとする姿勢に感動した。自分に子どもがいたら、朝鮮学校に入れたい。」と。文科省などの省庁交渉でも日本政府の姿勢に怒りが噴出した。文科省前の金曜行動では生徒たちと一緒に声を上げ、初めて参加した日比谷野音の集会とデモでは銀座で大きな声で無償化適用を訴えることができて気持ち良かったと話していた。これからもますます交流を深めていきたいと思う。 すでに古希を過ぎてもまだまだ学び直ししなければならないことがたくさんある。朝鮮学校無償化裁判を通して、多くの事を学ばせてもらっていることに感謝しながら、これからも朝鮮学校差別に抗する闘いに参加していきたいと思う。(2019年6月10日) |