Archive for 6月 18th, 2007
そこが知りたいQ&A-総連が国賠請求訴訟を起こしたが?
薬事法関連強制捜索、日比谷公園使用許可取消 司法の場で違法性を明確に
政治弾圧、朝鮮人差別以外に何ら理由を見出すことのできない警察当局の一連の不当捜索、日本政府や東京都の対応に対し総連は3月30日、二つの国家賠償(国賠)請求訴訟を起こした。問題の発端、違法の根拠などについてQ&Aで見る。
▼薬事法関連強制捜索訴訟
4日に行われた裁判報告
Q:問題の発端は?
A:警視庁公安部が昨年11月27日、高齢の同胞女性が薬事法違反行為を「教唆」し、違法に薬を入手したなどと警察当局がでっち上げた「事件」を口実に強制捜索したことだ。総連東京都本部、総連東京・渋世支部などを捜索し、資料、名簿、コンピュータやデータなどを押収した。
Q:なぜ捜索は違法なのか。
A:捜索差押令状の請求、発付、執行が捜査の正当性を求める憲法(35条)や、関連性、必要性を求める刑事訴訟法(222条1項、102条2項、218条1項など)に違反して行われたからだ。しかも、令状の範囲を逸脱した捜索、押収が執行された。
Q:何を理由に捜索、押収をしたのか。
A:同胞女性が不正に入手した薬を朝鮮に持ち出そうとし、その同胞女性の朝鮮への渡航手続きに同本部、同支部が携わった、したがって総連の組織的犯行の可能性があるというもの。
これらの間にはまったく関連性がなく、捜索、押収の必要性は何一つない。唯一の接点は、同胞女性の朝鮮への渡航手続きを手伝ったことだけである。だが、これは朝鮮の事実上の領事館である総連の一般業務の一つだ。しかも、渡航者の荷物の中身にまで関与することはありえない。にもかかわらず、本部、支部のみならず他団体の職員の自宅にまで捜索の手が及んだことは明らかに違法だ。
Q:「薬事法違反行為を教唆した」というが?
A:相手をそそのかして違法行為に及ばせることを教唆という。今回の場合、当の同胞女性が医師に対し無許可の医薬品交付、販売を決意させたとされている。だが、同胞女性は「医者から薬をもらうのが罪になるとは思ってもいなかった」と語っている。教唆は故意の場合を想定している以上、同胞女性の行為が教唆にあたることはない。そもそも同胞女性は、ごく一般的で正規の方法で医薬品を得ている。
▼日比谷公園使用許可取消訴訟
Q:何が問題なのか?
A:総連は「3.1人民蜂起88周年記念在日本朝鮮人中央大会」(3月3日)の会場として東京都立日比谷公園大音楽堂の使用を申請、利用料を納付し、使用の承認を受けた。しかし、大会の5日前になって急きょ、東京都が使用承認を取り消した。
Q:使用承認取り消しはなぜ違法なのか?
A:日本国憲法は集会の自由、表現の自由を保障している。また地方自治法244条1項は、公の施設の利用は正当な理由なくして拒みえないと規定している。さらに、利用を拒むことができる要件を明確にした最高裁第二小法廷平成8年3月15日判決と照らしても明白に違法である。
Q:取消処分をした理由は?
A:公園管理者側は、使用許可取消の根拠として東京都立公園条例16条10号と18条1項を挙げた。16条10号は「都市公園の管理に支障がある行為をすること」と定めている。だが、処分当時はまだ集会は行われておらず、関係者も立ち入っていない。また、公園条例18条1項は「(利用者は)知事の承認を受けなければならない」と定めている。だが、これは施設の利用について都知事の承認を要することを規定しているにすぎず、使用の制限や承認の取消について都知事の権限を定めているものではない。しかも、承認事務は指定管理者に委ねられている(条例24条の7の2項)。したがって、都の圧力による公園使用承認取り消しは集会を阻止するためのこじ付けと言わざるをえない。
Q:実際に混乱が予見されたのでは?
A:公園管理者側は、使用許可取消の理由を「警察の警備等によってもなお混乱が危惧され、公園の管理に支障が生じると認められたため」としている。その具体的内容について、管理会社や公園事務所に右翼団体の街宣車が押し寄せ、抗議を受けたとしている。しかし、当日に「予見」される混乱については具体的な調査を行っていない。2月22日の時点でも、警察への警備依頼有無について明確に答えなかった。
Q:今回、総連が国賠訴訟を起こしたのはなぜなのか?
A:一連の問題が総連に対する政治弾圧、在日朝鮮人に対する人権じゅうりんであること、そしてそれらの違法性、不当性を司法の場で明らかにすることによって、二度と繰り返させないようにするためだ。
強制捜索や不当、誤認逮捕など、警察当局による職権濫用ともいえる不当行為は各地で頻発している。これらは、「外国人は煮て食おうと焼いて食おうと自由」(1960年当時、日本法務省高官の発言)という発想が今も日本の官憲の間に根深いことを物語っている。その意味で今回の裁判は、「日本の行く末を占うものにもなる」と総連側弁護団は指摘している。(李泰鎬記者)
[朝鮮新報 2007.6.15]