Archive for 7月 10th, 2007

〈おはなしのチュモニ〉 石臼

ある見慣れない一人の旅人が慌てふためきながらやってくると、気もそぞろに代官の前に駆け寄るなり、ぱたっと跪いてしくしく泣き出した。

「お代官さま、わたしめの悔しい思いをどうか晴らしてくださいませ。」

代官は驚いてたずねた。

「何があったのじゃ。」

「私の家族、全部の命がかかった財産をそっくりなくしてしまったのでございます。私めは、ヨンアンに住んでいる牛買いをしている者でございますが、今日、この村の市場にまいりまして、牛5頭を百両で売りました。その金の包みを背負って、市場の裏にある居酒屋に行って、庭においてある石臼の上に金の包みを置いて中に入り、酒をいっぱい飲んだのでございます。その時、客は私一人だけでしたのに出てみると、金の包みがなくなっていました。これは居酒屋の主人の仕業に違いありません。お代官さま、どうか取り戻してくださいませ。あの金は、我が家の全財産なのでございます。」

牛買いは傷心しきって言った。

代官はさっそく居酒屋の主(あるじ)を呼んだ。

「おまえが居酒屋の主か?」

「はい、さようでございます。」

「この者がお前の店で酒を飲んだことはあるか?」

「はい、ございます。」

「ならば、この者がお前の店に入ってきたとき、何か担いできたものがあったであろう?」

「はい、何か荷物を担いでおりました。」

「その荷物をどこへ置いたのじゃ?」

「庭にあった石臼の上に置きました。」

「うむ、しっかりと見ておるのう。では、この者がお前の店に酒を飲みに入った後に、誰か側を通った者はいなかったのか?」

「それはよく分かりません。」

「お前が店の主でありながら、知らないとはどういうことだ?」

「私は、通り過ぎた人を見かけませんでした。」

代官は金を盗んだのは明らかなのに、シラを切る居酒屋の主をけしからんと思い、懲らしめる方法を考えていたが、いい策を一つ思いついた。

「ほう、これはまことに不思議なこともあるものじゃ。誰も通らなかったのに金がなくなったとは、それならば、その金は間違いなく石臼が食べたのであろう。」

代官は涼しい顔で言った。

「お代官さま、石臼が金の包みを食べるはずがないでしょう?」

居酒屋の主が思わずひとこと言った。

「持って出た者もいないのに、金がなくなったのだから、その金は間違いなくその石臼が食べたに違いない。石臼のほかに誰が食べるのだ。その石臼を店に置いておけば、これからもお前の店に酒を飲みに入ってくる客の金を、すべて食べてしまうだろう。ところで、お前がその石臼の主なのだから、そういった質の悪い石臼を家に置いた罪で、お前は少々苦労しなければならん。その石臼を背中に背負い、サンジュまで持っていって捨てろ。」

主は、代官の言葉に気が動転してしまった。

「あのような重い石臼は、私一人では背負えませんし、おまけにここから900里(注:朝鮮の一里は400㍍)も離れた遙か遠いサンジュへどうやって運べましょう。それでしたら、わたしがその金を弁償いたしまする。」

「よかろう。ならば石臼をサンジュに捨てるのは止めて、今後、石臼が金を食べないように地面を掘って埋めろ。」

居酒屋の主は、ぐうの音も出ず、家から持ってきた百両を差し出し、泣きながらからしを食べるように、やむを得ず、石臼も埋めて、二度と使えなくなった。

代官は、金を牛買いに返してやり、居酒屋の主には悪い癖が直るまで石臼を掘り出せないようにしたと言うことである。

訳:韓丘庸(児童文学評論家)

作者紹介:パク・ヘヨン、チェ・ミョンナム(編)

〈出展〉:「きみもぼくもハハハ!」(1)シリーズの「ひょうきん者」(01年、朝鮮出版物交流協会刊)に収録。

[朝鮮新報 2007.6.27]

重油第1便納入時点で、核施設稼動中止を検討 朝鮮外務省

  朝鮮外務省スポークスマンは「2.13合意」履行問題に関連し6日、朝鮮中央通信社記者の質問に次のように答えた。

 マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア」(BDA)に凍結された資金送金問題が解決されたあと、われわれは「2.13合意」に基づくわれわれの義務を約束した期間と順序よりも繰り上げて履行している。

 われわれに対する金融制裁が解除されてから30日以内にわれわれの核施設の稼動を中止するというのが、6者会談で合意した内容である。

 資金の送金が遅れて「2.13合意」履行の開始が遅延したとはいえ、われわれは失った時間を取り戻すため善意の立場から、資金の送金が完了してからわずか一日後、直ちに国際原子力機関(IAEA)代表団を受け入れることにより核施設稼動中止のプロセスに実際に着手した。

 「2.13合意」によると、同期間に重油5万㌧がわが国に提供されなければならないが、今では8月初めに全量が納入されるものと予見されるという。

 しかし、われわれは6者会談のプロセスを速やかに進ちょくさせるため、重油5万トンの全量が納入される時まで待たず、その10分の1ほどになる第1便が納入される時点で、核施設の稼動を繰り上げて中止する問題まで積極的に検討し、当該の準備を進めている。

 これについては関係側にすでに通知された。

 にもかかわらず、現在一部ではあたかもわれわれが「2.13合意」履行に関連して新たな要求をまた提起するかのようにミスリードする世論を流している。

 これは、「2.13合意」が順調に履行されるのを快く思わない勢力がいまだにしゅん動していることを示している。

 「2.13合意」履行は、「行動対行動」の原則に基づいてわれわれだけでなくすべての6者会談参加国に該当するものである。

 したがって、ほかの参加国も残りの重油95万トン分のエネルギー支援をはじめ各自が担った義務を履行するため、その準備を急ぐべき状況にある。

 ほかの参加国が自分のなすべきことを果たさない状況で、われわれだけが一方的に核施設の稼動を中止するわけにはいかないというのは、「2.13合意」を通じてすでに世界に知られている明白な事実である。

 もし、われわれが核施設の稼動中断措置を取ったあとも約束されている政治的、経済的補償措置が適時に伴わず信頼が崩れる場合、核活動の再開は合法性を帯びることになるであろう。(朝鮮通信)

[朝鮮新報 2007.7.9]-Korean-

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