ドナルド・トランプはこの戦争最大の敗者である エコノミスト・社説 2026年4月9日

ドナルド・トランプはこの戦争最大の敗者である エコノミスト・社説 2026年4月9日

2026.04.12

彼がイランからの出口を求めているのには理由がある

すべての戦争に勝者がいるわけではない。しかし、あらゆる戦争には少なくとも一人の敗者が存在する。そして、もし、それはかなり不確実な「もし」だが、停戦がイランでの戦争の終結を意味するのであれば、最大の敗者はドナルド・トランプとなるだろう。この紛争は、彼の主要な戦争目的を後退させ、アメリカの力を振るう新しい方法に対する彼のビジョンの浅はかさを露呈させた。

和平は絶望的な程もろい。アメリカとイランは、イスラエルから激しい攻撃を受けているレバノンが停戦の対象に含まれるかどうかで合意できていない。イスラエルの攻撃があまりに激しいため、広範な停戦への脅威は意図的なものにさえ見える。両国は、米国が交渉の前提条件としている「イランがいかにしてホルムズ海峡を開放すべきか」を巡っても対立している。そして両者の交渉ポジションはあまりにかけ離れており、今週末にイスラマバードで議論すべき計画が何であるかについてさえ、合意に至っていない。

トランプ氏が戦争に戻らないと考えるべき最良の理由は、彼が今、この戦争を始めるべきではなかったと理解しているということだ。イランを破壊すると脅かす彼の忌まわしい威嚇的な投稿は、自らの譲歩を覆い隠そうとする試みに見える。彼は、戦争の再開が市場をパニックに陥れること、そして中東における「黄金時代」を称賛した「4次元チェスのプレーヤー」が、愚か者に見えるリスクを冒していることを自覚している。

イラン側にも、自制する理由がある。指導者たちが殺され続けているのだ。彼らは、戦争で亡くなった数千人を含む自国民のことなど、ほとんど気にかけていないが、電力網や輸送網の徹底的な破壊は、国の統治を困難にする。彼らはまた、制裁の解除を望んでいる。イラン政権は、交渉のテーブルでは時間が自分たちに味方すると考えるだろう。アメリカは、常に攻撃の態勢を整えたまま軍を維持することはできない。もし再び戦争が勃発するとすれば、それはイランが自らの持ち札を過信して調子に乗った場合だけだろう。

したがって、最も可能性の高い結末は、傷ついたイラン政権が権力にしがみつき、交渉で最大限の目標を求めて粘ることだ。イランには海軍も空軍も残っていない。ミサイルやドローンの多くを失い、使い果たした。それらをさらに製造するには、2万1000回を超えるアメリカとイスラエルの攻撃によって、自国経済が数年も後退した事実に立ち向かわなければならない。

トランプ氏はこれを「偉大な勝利」と呼んでいる。だが、戦争の最も説得力のある3つの目的、すなわち「イランを飼い慣らすことで中東をより安全かつ繁栄させること」、「政権を打倒すること」、「イランが核保有国になるのをきっぱりと阻止すること」において、ほとんど進展がないことを考えれば、それは勝利のようには見えない。

この戦争は地域の安全保障を損なった。戦争が始まる前、イスラエルはイランの代理人勢力である民兵ネットワークを部分的に解体していた。しかし現在、イランは湾岸諸国を攻撃し、ホルムズ海峡を通る船舶を封鎖することで、新たな影響力の源を確立した。イランは海峡の使用料を徴収しようとしている。トランプ氏はその収益を分配することさえ口にしている。湾岸諸国とその顧客たちは、航行の自由に対するこのような侮辱に恐らく抵抗し続けるだろう。しかし、苦しい闘いが待ち受けている。

産油国が海峡を避けるために新しいパイプラインを建設した後でも――それには数年の作業が必要だが――イランは重要インフラを攻撃することができるだろう。「静かなオアシス」として自らを売り込んでいる湾岸諸国は、アメリカを信頼できるかどうか自問しなければならない。あるいは、自らもっと行動を起こすか、イランとの妥協点を見出すことで、自国の安全保障を再考すべきかもしれない。

トランプ氏が政権を倒したという弱々しい主張をしているにもかかわらず、現体制は存続している。彼は、イラン人がすぐに抑圧者に対して立ち上がり、その手柄を独り占めできることを期待しているのかもしれない。それは可能だが、政権が47年の歴史の中でかつてないほど不評だった開戦前よりも、今となってはその可能性は低く見える。アリ・ハメイニが倒れる中、政権は次世代への危険な移行に直面していた。戦争はその移行をもたらし、アリの息子、モジタバを即位させた。アリとは異なり、彼は名目上のトップに過ぎない。実権はイスラム革命防衛隊とその対立する派閥の手にある。彼らは皆、好戦的なナショナリストである。

そして、この戦争は核の脅威を悪化させたかもしれない。アメリカとイスラエルはイランのインフラにさらなる打撃を与えたが、10発の核爆弾を作るのに十分な約400kgの高濃縮ウランは、今も核施設に埋もれたままである。トランプ氏はイランに対し、この「核の塵」を引き渡すよう要求している。イランは制裁解除を求めているが、将来の攻撃を抑止するために、それを爆弾製造に利用しようとする動機は高まっており、潜在的に地域の核拡散を招く恐れがある。それは悲惨な結末だが、それを阻止するためにトランプ氏や将来の大統領は、数年おきに攻撃を仕掛けなければならないかもしれない。この戦争の証拠に照らせば、それを維持するのは困難だろう。

この紛争の設計者たちは、どのような立場に置かれているか。イスラエルが今日ほど強力な軍事力を行使したことはかつてなかった。しかし戦争は、軍事力で達成できることの限界と、その先制攻撃への渇望がいかに地域に恐怖と憎悪をもたらしているかを示した。多くのイスラエル人にとって、アメリカと共に対等に戦うことは大きな国民的誇りを呼び起こした。しかし、イスラエルが共和党の政治家から称賛を得ている一方で、現在アメリカ人の60%がイスラエルに否定的な見方をしており、昨年から7ポイント上昇している。これはイスラエルを弱体化させるものである。

トランプ政権下のアメリカには、さらに省みるべきことがある。かつてこの国は、軍事力と道徳的権威を一致させることで力を得ていた。しかし、その国の大統領がイラン文明を全滅させると脅すとき、言い換えれば大量虐殺を行うということだが、それは、道徳をあたかも弱さの源であるかのように扱っていることになる。

トランプ政権の一部の人々は、アメリカが国際法やジュネーブ条約が窮屈であるかのように振る舞っている。それらの制約から解放されれば、より強力になれるというわけだ。しかしこの戦争は、「力は正義なり」という考えが数十年間の外交政策への冒涜であるだけでなく、誤謬であることを示した。イランにおいて、AIを軍事作戦に統合し、撃墜されたパイロットを救出し、低コストで優位性を確保するなど、アメリカの軍事的分野での卓越性は存分に発揮されたが、それは同時に深い問題を露呈させた。

この戦争は、アメリカが力の価値を過大評価しやすいことを示した。アメリカの工場は軍隊に迅速に補給することができないが、一方でイランは限られた武器で非対称戦争を戦い抜いた。過剰なテストステロン(雄性ホルモン)は、「殺傷能力」と「勝利」を混同する無残な判断を招く。戦略なき圧倒的な火力は、アメリカの力を削ぐだけである。

イランには邪悪な政権があるが、正義の戦争というものは、暴力が必要な最後の手段であるという冷静な判断に基づかなければならない。代わりにトランプ氏は、イランを自らの虚栄心を満たすためのプロジェクトとして扱い、アメリカの強さがあれば、攻撃を選択したことの結果を考え抜く責任から免除されると考えた。「力」だけでは正義にはならない。時として、それは勝利をもたらすことさえ出来ないのである。(“Donald Trump is the war’s biggest loser”, ‘There is a reason he wants an exit from Iran’, The Economist, April 9, 2026)

ドナルド・トランプはこの戦争最大の敗者である エコノミスト・社説 2026年4月9日

 

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