同胞女性の「薬事法違反」 不起訴処分、安倍政権 マスコミ一体の犯罪
事実無根、でっち上げ、人権じゅうりん
執権以来、安倍政権は段階的に総連に対する政治弾圧の度合いを強め、現在、総連中央会館の土地、建物まで奪い取ろうと狂奔している。こうした中、さる6月20日、「薬事法違反」の容疑がかけられていた同胞女性の不起訴処分が決まった。これまで、数度にわたって行われた強制捜索の口実となった「犯罪」がねつ造であったことが明らかになった。
作り上げられた「法的根拠」
不起訴処分と関連して4日に
行われた記者会見
6月20日、不起訴処分を決定した際、東京地検は「利得や闇取引の目的はなかった。総連の組織的な関与も見られない」と認めた。これにより、総連東京都本部や同胞女性宅への強制捜索に「法的根拠」がなかったことが客観的に証明された。
警察当局による強制捜索と時を同じくして、日本のメディアは同胞女性を「北のスパイ」であるかのように扱いながら、「犯罪人」の汚名を着せた。
不起訴処分が決まったあと、同胞女性は当時を振り返りながら「何の罪もないのに、まるで私がスパイとして活動しているかのように事実をねつ造した捜査当局とメディアの報道に強い憤りを覚える」と語った。
同胞女性の弁護を担当した弁護士たちは、最初から犯罪が成立する要件がなかったため不起訴処分は当然のことだとしながらも、「強制捜索をするために『犯罪』がねつ造されたという事態の重要性を見過ごすことはできない」と口をそろえた。
同胞女性宅への強制捜索が行われたのは、昨年11月27日午前8時頃だった。捜査官は「勝手に行動したら逮捕する」と、同胞女性と現場に駆けつけた総連活動家、同胞らを威嚇しながら、家族の旅行写真や料理に関する資料など「容疑」とは何の関係もないものまで押収していった。
その後、年末まで事情聴取が執拗に行われた。警察は、何とか「犯罪性」を立証しようと同胞女性が通う病院をも捜査したが、「犯罪」を立証する「証拠」は出てこなかった。にもかかわらず、捜査官は当時、「とにかく処分は下される」と強弁したという。
ようやく今年6月4日に書類送検されたが、捜索に着手してから送検まで半年以上もかかった。法曹界の一般的な常識からすると、「半年」はあまりにも長い期間だ。これについて担当弁護士は、「とうてい理解できないこと」だと指摘する。
6月17日、形式的な警察官面談が行われたのに続き、20日に不起訴処分が決まった。
中身のない事情聴取、書類送検の遅延、そして不起訴処分に至るすべての過程は、捜査当局が同胞女性に被せた「嫌疑」を証明できるような証拠や事実関係を一つも見つけられなかったばかりか、最初から強制捜索を行うために「犯罪」をねつ造したということを反証している。
令状請求に「政治的圧力」
警視庁公安部外事課は、数百人の警官を動員して同胞女性宅と総連東京都本部をはじめとする6カ所、本部職員宅2カ所を強制捜索した。
一連の強制捜索は、「誤った捜査だった」と一言の弁明で済むレベルの問題ではない。担当弁護士らは、令状請求の段階から政治的な圧力が加えられ、すべての過程が「強制的」に執行されたと疑わざるをえないと指摘した。
古川健三弁護士は今月4日の記者会見で、「犯罪」をねつ造して行われた強制捜索の目的が何だったのかを厳しく追及しなければならないと強調した。
総連が日本と東京都に対して起こした国賠訴訟(3月30日)では、一連の強制捜索が捜索差押令状の請求と発布、執行など捜査の正当性を求める憲法(35条)と刑事訴訟法(222条1項、102条2項、218条1項など)該当規定に違反して行われ、令状の範囲を超えて捜索、押収が行われたことを問題点としている。
検証せず便乗したメディア
「薬事法違反」という警察発表に便乗したメディアは当時、何ら事実検証することなく垂れ流した。新聞はセンセーショナルな見出しをつけて大々的に報道し、テレビも「有識者」を登場させて「生物兵器を生産する危険な国」の指令を受ける「危険な人物」という誤ったイメージを意図的に流布した。
国家権力による反朝鮮、反総連策動に合流し、民族排他の風潮をあおったメディアの責任は大きい。
しかし、当時あれほど大騒ぎして報道合戦を繰り広げたメディアが、不起訴処分についてはほとんど関心を示さなかった。
ある地方新聞社の地域報道部記者は、「『金儲け』につながらない記事、『外国人』を擁護する記事を会社の上層部はよく思わない。日本の権力機関を批判する外国人ならなおさらだ」と不起訴処分と関連した「縮小報道」の構図を説明した。
一方の当局はこれに懲りず、引き続き総連に対する政治弾圧を強めている。
総連中央会館に対する強制競売申請がメディアで取り上げられるやいなや、安倍首相は「総連の構成員が拉致をはじめとする犯罪に関与してきた事実が明らかになっている」「総連は破壊活動防止法の調査対象にもなっている」との暴言を吐いた。メディアは、この首相の発言をまた、そのまま垂れ流した。
何の根拠もなしに、無辜の、それも高齢の同胞女性を「薬事法」に違反したと騒ぎ立てた日本メディアの偏向報道は、総連の最高幹部までをも「拉致問題」と関連付け、総連を「犯罪団体」であるかのように取り扱う段階にまで至っている。
徹底追求、糾弾の声を
国賠訴訟を担当している総連側弁護士は、「このような『犯罪』ねつ造が1回でも認められれば、今後は在日朝鮮人に対して何をしても許されるという風潮になる。裁判を通じて、日本政府と警察当局による政治弾圧の違法性を明らかにして、再発防止の環境と条件を整えなければならない」と強調した。
日本当局の弾圧に反対、抗議する総連と在日同胞の運動と活動は決して孤独なものではない。
1日に発表された朝鮮外務省スポークスマン声明は、総連中央会館への強制競売策動を「主権侵害」と規定。安倍政権が分別ない対決騒動に固執する場合、「該当部門で必要な措置を取る」と警告した。
また、国連代表部代表は国連事務総長宛に書簡を送り、日本当局による総連と在日朝鮮人に対する弾圧問題を、今年の国連総会の議題に上程するよう提議した。
6者会談の進展など、国際情勢の推移に逆行して孤立しつつある日本は、総連弾圧を糾弾する朝鮮の外交攻勢に直面しさらに窮地に追い込まれている。分別のない総連弾圧は、余命いくばくもない反動右翼政権の最後の悪あがきである。(取材班)
[朝鮮新報 2007.7.23]