〈第13回在日同胞大登山大会〉 長野県・木曾駒ケ岳 絶景に「元気もらえた」
全国各地から160余人が参加 東京同胞山友会ホームページ
第13回在日同胞大登山大会(主催=在日本朝鮮人登山協会、主管=愛知県同胞登山協会)が14~15日、長野県の木曾駒ケ岳(2956メートル)で行われた。17都道府県から160余人の同胞愛好家らが参加した。
笑い、食べ、歌い、踊り
初日は、地域ごとに現地に集合し、富士見台高原(1739メートル)周辺を散策した。ガーベラやメランポジウムなどの花を楽しみながら、ロープウェイやリフト、徒歩で展望台(1602メートル)を目指した。
最高の天候に恵まれた登山大会。同胞たちの
顔にも笑みがこぼれた(中岳=2925メートル)
夜には、宿泊先の旅館で宴会が開かれ、交流を深めた。金載英会長があいさつをし、「北南は統一に向けて歩んでいる。日本の情勢は厳しいが、こうしてたくさんの同胞たちを目の前にできてうれしいかぎり。さらに団結を深めていこう」と呼びかけた。
参加者たちは、女性同盟愛知県本部が準備したキムチやチヂミ、そして美味しい料理に舌鼓をうち、1年ぶりに再会した仲間たちと談笑し合った。
山で再会-一年に一度の同胞大登山
大会の開催と再会を喜び合う参加者たち
宴の終盤は、東海朝鮮歌舞団らによる公演で盛り上がった。南朝鮮のシンガーソングライター・ハンドル氏とともに「ホルロ(一人)アリラン」を合唱。踊りの輪も広がり、会場は一つになった。
6回目の参加という愛知県の韓春子さん(60)は「普段、日本のマスコミが流す情報に不安になったり、足が地に着かない気分になったりするが、久しぶりに仲間の元気な顔を見たら、山の大地をしっかりと踏みしめているような気持ちになれた」と語った。
満面の笑みで「マンセー」
2日目、天気は良好。気温も風も山登りには最適だった。一行はバスで目的地の木曾駒ケ岳に向かった。ぐるぐると山道を登り、しらび平駅(1662メートル)に到着。ロープウェイに乗り、色づき始めた紅葉に目を細めながら千畳敷(2612メートル)に登った。
「よし、あとひと踏ん張り」-山頂を目指す参加者ら(左)、
「疲れたら一服」。登山では水分補給が大切。(右)
ここからは散策する人、中岳まで登る人、頂上まで 登る人などそれぞれが体力に合わせて、山を満喫した。頂を目指した104人ほどは、2時間をかけ八丁坂、乗越浄土、中岳を超え、山頂を制覇した。
青い空に澄んだ空気、そして絶景-足を止めて来た道を
振り返ると最高の景色が登山者の体を軽くしてくれる
階段状の岩場の登山道を一歩一歩進む。ごつごつした足場、急な坂、高地。道のりは少し険しかったが、励まし合い、助け合いながら、山頂にたどり着いた。みな、苦労して登ったかいがあったと、満面の笑みで「マンセー(万歳)」を叫んでいた。そして、清々しい空気を全身で浴び、絶景を眺め、おにぎりをほおばった。
「友人に誘われて」「知り合いはいないけど、思いきって来てみた」と初参加者も多かったが、「同胞同士なら地域が違っても、すぐに親しくなれる」「来年も友だちを誘って必ず来る」と楽しんでいた。
参加者らは、年に一度の大登山大会の醍醐味を味わった余韻に浸りながら、「また来年!」と約束を交わし、それぞれの帰路に着いた。
「お金で買えない最高の思い出」
木曾駒ケ岳で盛大に行われた第13回在日同胞大登山大会は、終始同胞たちの笑い声と笑顔に包まれていた。木、花、空、雲、風…季節を感じ、山を愛する人たちと出会う。山頂までの道のりは長く、険しいが、てっぺんから見おろす絶景、透き通った空気、登 りきった時の達成感は言葉に尽くせない。
「苦労のあとは…」-2956メートルの
山頂到達を喜ぶ参加者たち
群馬県から来た李貞淑さん(57)は、年内に日本の81名山を登る予定だ。「しんどくても、頂上に到達した時の達成感はなんとも言えない。還暦までに100名山を登ることを目標にしている」と意気込む。
この日は最高の登山日和。紅葉を楽
しみながら登山する参加者たち
また大会は、そんな感動を各地の同胞たちと分かち合い団結、連帯を深めあえる場でもある。民族情緒や祖国愛に満ちた「アリラン風景」を在日同胞の中で探そうと、今年も同大会を訪れた南朝鮮のシンガーソングライター・ハンドル氏は「両親が咸鏡道の出身だから、素朴な在日同胞の中にいると 故郷に帰って来たような気分になる」と言う。彼が作った「ホルロ(一人)アリラン」は大会でよく歌われている。
在日登山協会の数は、各地で年々増えている。今後も岐阜県で発足する予定だ。若いハイカーたちも増えている。
初めて参加した兵庫県の徐正任さん(71)は「もう年だから不安もあったけど、本当に来てよかった。たくさんの同胞と出会え、宴も楽しくて、お金では買えない最高の思い出を得られて胸がいっぱい」と笑顔で話した。
疲れも忘れるおにぎりタイム。きれいな
景色を見ながら達成感に浸り、山頂で
の昼食を楽しむ参加者たち
5年前から健康のために登山を始めたという奈良県の李珍雨さん(67)は「日本の山もいいが、やっぱり朝鮮半島の山を登りたい。『白頭から漢拏まで』という歌詞のように、自由に行き来できれば。北と南の山岳家たちとみんなで交流したい。近い日にそんな日が訪れるはず」。(文=姜裕香記者、写真=盧琴順記者)